株価は、決算や経済指標のような「予定された出来事」でも、企業のニュースのような「その日出てくる情報」でも動きます。
ただし、同じニュースでも反応が大きい日もあれば、小さい日もあります。為替も同様で、生活や企業に影響すると言われる一方、報道に煽られて必要以上に慌ててしまいがちです。
日本大学の三井秀俊 教授に、株価が動く要因の整理のしかた、為替情報との距離の取り方、初心者がやりがちな「もったいない」行動、そして値動きが怖いときに続けるための考え方を聞きました。

日本大学 経済学部 教授
三井 秀俊 / Hidetoshi Mitsui
【プロフィール/略歴】
東京都立大学助手、日本大学経済学部専任講師・助教授・准教授を経て、2015年より同大学経済学部教授。この間、千葉大学大学院・一橋大学大学院・筑波大学大学院・埼玉大学大学院・上智大学大学院・電気通信大学・東洋大学非常勤講師、埼玉大学大学院客員准教授・客員教授、日本大学経済学部経済研究所長、デューク大学客員研究員などを歴任、 博士(経済学)。専門は株式市場・デリバティブ市場・外国為替市場の計量分析。著書 『オプション価格の計量分析』(2004年,税務経理協会)、『ARCH型モデルによる金融資産分析』(2014年,税務経理協会)など。
株価は事前に予測できない。だから短期の反応に振り回されない
FXインフォメーション合同会社(以下FXI):株価が大きく動く日と、あまり動かない日の違いは、何で決まるのでしょうか?
三井氏:一番分かりやすいのは、決算発表の後ですね。日本では前場と後場との間の昼休み、大引け後に決算が発表されることが多く、発表のタイミングによってはその直後や翌日に株価が大きく動きます。
ただし、決算が良ければ必ず株価が上がるわけではありません。売上や利益が増えていても、それだけでは不十分なこともあります。
配当が増えるかどうかや、自社株買いを行うかといった点も重要で、特に自社株買いの発表は株価に強く影響しやすいですね。
FXI:決算以外にも、株価が大きく動く要因はあるということですね。
三井氏:そうですね。経済指標の発表も影響します。ただ、すべての指標が同じように株価を動かすわけではありません。
日本の株式市場はアメリカの経済や株式市場の影響を強く受けているので、アメリカの重要な経済指標の発表後に、日本の株価が動くことも多いです。
また、急激な円安や円高が起きた場合には、それに連動して株価が大きく動くこともあります。
FXI:なるほど。
ちなみに、同じニュースでも大きく動く日と動かない日がありますが、初心者は「今日は反応しやすい日かどうか」を事前に判断する方法はありますか?
三井氏:それはプロでも分からないと思います。
ニュースが出たあとに、結果として動いたかどうかが分かるだけですね。
ただ、多くの場合、ニュースに対する反応は1日から2日程度で落ち着きます。
だから短期の値動きに反応しすぎないように、週単位や月単位で見た中長期のトレンドを意識することが大切だと思います。
為替は毎日追わなくていい。水準感だけ押さえれば十分
FXI:為替が動くと、輸入品の値段や企業業績など、いろいろ言われますが、個人が情報に振り回されないために意識すべきことはありますか?
三井氏:為替は、株式投資をしていない人でも日常生活に影響します。円安になればガス代や電気代、輸入食品の価格は上がりやすくなりますし、円高ならその逆です。
ただ、毎日細かくチェックする必要はありません。米ドル・円相場が今どのあたりの水準にあるのかを、週に一度くらい把握するだけでも十分だと思います。
FXI:為替報道を見ると、不安になってしまう人も多いと思います。
三井氏:テレビや新聞の報道はどうしても煽りがちですが、数円動いたからといって、生活が急激に変わるわけではありません。
株式投資をしている人であれば、自分が持っている企業が円安で有利なのか、円高で有利なのか、その関係を理解しておくことが大切ですね。コモディティ(Commodity)等に投資している場合にも円高になると円ベースでの資産価値は下落するので注意してください。
株で失敗する人は、値動きの前提を勘違いしている
FXI:投資初心者がやりがちな失敗として、先生がデータや現場感覚から見て「これはもったいない」と感じる行動は何でしょうか?
三井氏: 一番多いのは、暴落時に焦って売ってしまうことですね。株価指数は年に一度か二度、大きく下がることがありますが、その後に戻ることも少なくありません。
それなのに、下がった瞬間に怖くなって売ってしまうのは、もったいない行動だと思います。
FXI:値動きそのものへの理解が足りない、ということでしょうか。
三井氏:そうですね。普段の買い物は定価がある世界ですが、株式市場は需要と供給で常に価格が決まります。
株は2割、3割下がることも珍しくありませんし、逆に倍になることもあります。
そうした前提を理解していないと、少し上がっただけですぐ売ったり、少し下がっただけで慌てたりしてしまいます。
FXI:「長期投資は安全」というイメージを持つ人も多いです。
三井氏:それも誤解されやすいですね。長期投資はうまくいけば大きな利益になりますが、その分リスクも大きい。
長期だから安心だと思い込まず、価格変動の大きさを理解したうえで投資することが重要だと思います。
値動きが怖いなら、見る時間軸と選ぶ商品を変える
FXI:値動きが怖くて投資をやめたくなる読者に向けて、続けるための考え方や小さなルールがあれば教えてください。
三井氏:一つは、値がさ株を避けることです。
一株数万円する銘柄よりも、数百円から千円台の株のほうが、値動きの幅が小さく感じられて精神的に楽になります。
ただし、割合 (%) で見ると大きく動いていることもあるので、その点は注意が必要です。
FXI:見方を変えることも大切ですね。
三井氏:そうですね。日々の値動きではなく、週足や月足といった中長期のトレンドを見ることで、短期の上下に振り回されにくくなります。
それでも個別株が怖い場合は、株価指数連動型ETFや業界別のETFを選ぶのも一つの方法です。大きな値動きがあるのが株価の特徴なので、無理のない形で向き合うことが大切だと思います。
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