中央大学自動車部に聞く競技の魅力と人として磨かれる力

大学の自動車部には、走る技術を競うだけではない奥深さがあります。

ジムカーナやダートトライアル、フィギュアといった競技ごとに求められる力は異なり、整備やセッティング、チームでの役割分担まで含めて、一つの競技が成り立っています。

中央大学自動車部でも、競技の現場を支えるのは選手だけではありません。

部会長・顧問を務める阿部教授、そして主将の内田直樹さんへの取材を通して、競技の面白さや難しさ、整備を通じた成長、自動車部ならではの魅力が見えてきました。

本インタビューでは、自動車競技の面白さや整備を通じた成長、自動車部で得られる経験について中央大学の阿部教授にお伺いしました。

目次

競技ごとに異なる面白さと難しさ

FXインフォメーション合同会社(以下FXI): ジムカーナやダートトライアルなど大学自動車競技にはさまざまな種目がありますが、それぞれの競技にはどのような面白さや難しさがあるのでしょうか。

内田氏: 大学自動車競技には主にジムカーナ、ダートトライアル、フィギュアの三つがあります。それぞれに異なる面白さや難しさがあります。

ジムカーナは、パイロンで構成されたコースを一台ずつ走り、タイムを競う競技です。

正確な運転操作や瞬間的な判断力が求められるところが難しく、面白い点でもあります。

コースは当日に発表されるので、その日の朝に見て覚えて走ることになり、ミスやタイムロスを避ける緊張感があります。

ダートトライアルは未舗装路を走るため、路面状況に応じてうまく走る必要があります。

毎回同じ条件ではないので、車をコントロールする感覚が難しさであり、面白さでもあります。さらにスピードが最も乗る競技でもあります。

フィギュアは、決められた狭いコースを何度も練習し、線にぶつかったり踏んだりしないように走る競技です。

他の競技と違って一本しか走れないため、大会に行って一本走って終わりという緊張感があります。

FXI: 競技ごとに求められる力がかなり違うのですね。コース条件や走行回数の違いまで含めて、同じ自動車競技でも性質が大きく異なることが伝わってきました。

阿部氏: ジムカーナは舗装路で行うので、ダートトライアルよりは車体のコントロールがしやすい競技です。

アクセル、ブレーキ、ハンドル操作を統一的に行い、最短距離で最短時間を目指すことが求められます。

ダートトライアルは未舗装路なので、アクセルを踏むと車体が滑りやすくなり、ブレーキを踏めばさらに滑ります。

その中でスピードを競うので、高度な技術が必要になります。

根性がないとアクセルは踏めませんし、テクニックがないと競技になりません。

フィギュアはスピード競技ではなく、限られた範囲の中で車体の向きを変えたり、バックでくねくね進んだりする競技です。

運転教習所の課題に近いイメージを持ってもらうとわかりやすいと思います。

FXI: 競技ごとに向いている人のタイプはあるのでしょうか。

内田氏: 向いているかどうかは、かなり性格によるところがあります。

ジムカーナは、細かいところを一つひとつ詰めるのが好きで、なおかつスピード感覚もある人が向いていると思います。

決められたことを同時に体で動かせる人に合っていて、フィギュアにも少し近い部分がありますが、ジムカーナの方がよりスピードに重きを置く印象です。

ダートトライアルは、その瞬間ごとの対応力が問われますし、そこでアクセルを踏めるかどうかも大事です。

肝が据わっていて、強い気持ちを持てる人が速いのではないかと思います。

FXI: 技術だけでなく、性格や感覚の違いが競技選びにもつながるのですね。自分に合った種目を見つけていく面白さもありそうです。

阿部氏: ジムカーナは、毎回同じように正確に操縦できればタイムが縮まる競技です。そういう意味で性格が表れやすいと思います。

ダートトライアルは、車が滑る中でどうコントロールするか、そしてその中でスピードを競うので、やはり技術と気持ちの両方が必要になります。

整備とセッティングを通じて身につく力

FXI: 自動車部では、競技車両の整備やセッティングも学生自身で行うと聞きます。活動を通じて、学生はどのような整備技術や車両知識を身につけていくのでしょうか。

内田氏: 車両の整備やセッティングは、基本的に自分たちで行います。

最初は何も知らないところから始まり、オイル交換やタイヤ交換、ブレーキパッドの点検といった日常整備を学びます。

その中で、工具の正しい使い方や作業手順、安全性について理解しながら、車の基本構造を実感として学んでいきます。

上級生になるにつれて、サスペンションやデファレンシャルギア、ブレーキ、エンジンといった部分まで分解や組み付けができるようになっていきます。

セッティングでは、ジムカーナであればタイヤの空気圧やキャンバー角など、自分たちにできる範囲で最大限の調整をしながら、走りに応じて変えていくイメージです。

FXI: 日常整備から始まり、学年が上がるにつれてより深い領域に進んでいく流れがよくわかりました。

競技だけでなく、車そのものへの理解が実践の中で積み重なっていくのですね。

阿部氏: 中央大学自動車部の部室は学内にありますが、東京都から認証工場の指定を受けています。

条件が整えば車検も取れる環境です。OBの中には二級整備士の資格を持っている方もいます。

最近は資格取得者はいませんが、きちんと学べば整備士資格を取れるレベルに達すると思います。

エンジンをばらして組み付ける学生もいて、全員ではありませんが四年生になる頃には車を一通り整備できて、競技のセッティングができるようになる学生もいます。

FXI: エンジンをばらしてオーバーホールするような整備は、誰かに教わりながら学ぶのでしょうか。それとも自分で調べながら進めていくのでしょうか。

内田氏: 先輩たちがやってきたことを学んで進めるパターンもありますし、そこから外れる部分については、SNSで調べたり、OBや監督の力を借りたりしながら情報を集めて進めています。

FXI: 先輩から受け継ぐ部分と、自分たちで調べて切り開く部分の両方があるのですね。

知識が蓄積される環境だからこそ、挑戦の幅も広がっていくのだと感じました。

阿部氏: 自動車部は、入学前から免許を持っている学生がほとんどいません。

基本的には皆が同じレベルからスタートします。

だからこそ、上級生やOBが安全に配慮しながら、ゼロから全部教えていく形になっています。

FXI: 車に詳しくない状態で入部した場合、どのようなステップで整備ができるようになるのでしょうか。

阿部氏: 基本的には興味があるだけで入ってもらって問題ありません。

多くの学生がほぼ初めての状態から始めます。

自動車で競技をやってみたい、整備をやってみたいという気持ちがあれば、誰でも歓迎です。

上級生やOBが安全に配慮しながら教えていくので、最初から詳しくなくても気にしなくて大丈夫です。

FXI: 初心者でも入れる余地がしっかりあるのは心強いですね。知識や経験の有無より、まず興味を持って飛び込める環境だと感じました。

内田氏: 本当にその通りだと思います。

最初から詳しい人ばかりではないので、そこは心配しなくて大丈夫です。

競技と整備を通じて変わる車の見方

FXI: 車が好きで入部する学生も多いと思いますが、競技や整備を経験する中で「車の見方」や「運転に対する考え方」はどのように変わっていくのでしょうか。

内田氏: 最初は、車が好きという感覚で入ってくる人が多いと思います。

見た目のかっこよさや速さといったイメージから入ることが多いです。自分もそうでした

ただ、競技や整備をしていく中で、車を完成された製品として見るのではなく、自分で触って作り上げていくものとして見るようになります。

そのうち、車を構成する要素を分けて考えるようになり、性質や構造を見る目が深くなっていきます。

運転についても、最初はとにかく速くという感覚が強いのですが、速さだけでなく、正確な運転や車に優しい運転、車を壊さない走りが大事だと感じるようになりました。

自分だけが乗るわけではないので、他の人にも配慮した車の扱い方へと変わっていきました。

FXI: 車への向き合い方が、憧れや速さから、構造や扱い方への理解へと変わっていくのですね。

競技経験がそのまま視点の深まりにつながっていることが伝わってきました。

阿部氏: 入部前は、大会で活躍する選手の姿を想像しやすいので、ドライビングテクニックが高くなれば活躍できると思って入ってくる学生が多いと思います。

でも実際には、選手だけでなく、競技中に車体のセッティングを変えていく整備力が勝つためにはとても重要です。

車が仕上がっていなければ、能力の高い素晴らしい選手でも勝つことはできません。

選手が車を壊せば、直す人も必要になります。

実は選手以外の部員の力がとても重要で、自動車部ではチームプレーが重要なんです。

FXI: 表から見える世界と、実際に中に入って見える世界はかなり違うのですね。

阿部氏: そうですね。独りよがりだとうまくいきません。

皆が勝つという目標に向かって、それぞれの立場で自分の仕事をこなしていく必要があります。

たとえば部の予算管理も重要な仕事です。お金が足りなくなればスポンサーを集めることまで含めてチームでやっています。

自動車部へ入ってみると、外から見ていた印象とはかなり違うと感じると思います。

どちらかというと会社経営に近い面もありますね。

仲間と挑戦し、人として成長できる場所

FXI: 車が好きな高校生や大学新入生にとって、自動車部はどのような魅力のある場所なのでしょうか。

これから車やモータースポーツに興味を持つ若い世代へメッセージをお願いします。

内田氏: 自動車部の魅力は、仲間と車を作り上げて、一緒に勝負しに行けるところだと思います。

車はお金があれば個人でも触れますが、大学生でお金が限られている中で、皆で車を作り、悪いところを直し、他大学と戦って勝利を目指せるのは自動車部ならではです。

整備技術や知識も代を超えて受け継がれていき、チームとして成果を出せるのが魅力です。

車が好きということだけでなく、仲間と学び、挑戦しながら、自分も周りも成長していける場所が自動車部であり、魅力だと思います。

FXI: 個人で車を楽しむのとは違う、チームで作り上げていく面白さがあるのですね。

阿部氏: 大学の部活動は、学生時代だけで終わるものではありません。

自動車部も、卒業したOBやOGとのつながりの中で続いていきます。他大学も含めて、いろいろな人が競技を支えています。

自動車をいじることだけでなく、人のつながりができることは大きなメリットです。

人生の中で長く付き合える友人やネットワークができるのは、自動車部に入る良さの一つだと思います。

FXI: 自動車部で大変だったことや、きつかったことがあれば教えてください。

内田氏: みんながきついと思っている定番は、やはり夏合宿です。

夏合宿は1週間ほどあるのですが、かなりきついですね。

自動車部は体育会系の面があって、ただ速い人を育てるのではなく、社会に出て活躍できる人を育てることが根底の目的にあります。

だから夏合宿では、車で走るより、人が走っている方が多いくらいです。

山を走ったり、一日走っていたり、時間にも非常に厳しく、一分遅れても強く注意されるような感覚です。

体力的にも精神的にもきついですが、それが魅力でもあり、きつさでもあります。

FXI: 走る技術のためだけではなく、人を鍛える場としての色合いが強いのですね。

厳しさの中に、自動車部の考え方そのものが表れているように感じました。

阿部氏: 昔の自動車は今より体力を使うことが多かったですし、試合で長距離を運転することも多いので、体力づくりには意味があります。

トラックを運転する学生もいるので、腕力が必要な場面もありました。

走ることや筋トレ、挨拶、時間厳守といったことは、社会に出てからも重要です。

部としては運転技術だけでなく、人間性を磨くことも重視しています。

特に一年生だけでなく、三年生や四年生が合宿を経て変わっていくのも印象的です。

中央大学自動車部の強さを支える考え方

FXI: 中央大学自動車部は全日本大会でも優勝するなど、学生自動車競技の中でも強豪校として知られています。

その強さはどのような取り組みや考え方から生まれているのでしょうか。

内田氏: 先ほどお話しした内容と重なる部分もありますが、競技力の向上だけではなく、人として成長することを重視している点が大きいと思います。

中央大学自動車部では三原則を徹底していて、自分たちが決めたルールをしっかり守ることを大切にしています。

目標を一つに定めて、全員が同じ方向を向いて進んでいくことが、強さにつながっているのではないかと思います。

FXI: 競技の技術だけでなく、日頃の姿勢や人としての土台づくりが強さを支えているのですね。

阿部氏: 勝つときもあれば負けるときもありますが、私自身はまず自分自身に勝てればいいのではないかと思っています。

自分が目標としているタイムや、自分がやるべきことをきちんと果たせれば、結果としてチームの勝利につながるはずです。

負けるときは、選手が失敗したときだけでなく、整備がうまくいかないときの場合もあります。

だからこそ、一人ひとりが三原則を守り、自分の役割を自覚して、それをしっかり果たすことが大切です。

選手、整備を担う部員、主将、マネージャーなど、それぞれの役割がきちんと機能すれば勝てると思っています。

最後に問われるのは、やはり人間力や人間性なのだと思います。

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