大学自動車競技は、ジムカーナや耐久レース、eスポーツなど多彩な種目で構成され、学生自らがドライバー・エンジニア・スポッターといった役割を担いながらチームで戦う。車両の整備から競技戦略の立案まで、すべてを学生が主体となって進める活動の中に、他では得られない深い学びと達成感がある。
各競技の面白さや整備での経験、部活を通じた車への向き合い方の変化から部の特徴、若い世代へのメッセージまでを、本インタビューでは、ジムカーナ・耐久レース・eスポーツにまたがる活動の魅力について東京電機大学の主将の畑田侑輝 選手、副将の前川陽菜 選手にお伺いしました。

東京電機大学 東京千住体育会 自動車部
【プロフィール/略歴】
▼1958年
・東京電機大学東京千住体育会自動車部 設立
▼2024年
・本庄軽one耐久NNクラス2024 学耐クラス第3戦 優勝
・GTカレッジリーグ 2024 優勝
・FORMULA GYMKHANA 2024 Rd.2 女子クラス 優勝(女子初全国大会出場)
▼2025年
・Projectμプレゼンツ 本庄軽one耐久 学耐クラスシリーズ2025 シリーズ準優勝
・GTカレッジリーグ 2025 2年連続 優勝FORMULA GYMKHANA 2025 Rd.2 4位(男子初全国大会出場)
▼2026年
・全関東学生ジムカーナ選手権大会 新規定女子クラス 団体 優勝(女子初全国大会出場)
・Projectμプレゼンツ 本庄軽one耐久 学耐クラスシリーズ2026 第1戦 準優勝
ジムカーナ・軽耐久レース・eスポーツ——それぞれに宿る面白さと難しさ
FXインフォメーション合同会社(以下FXI): ジムカーナや耐久レース、eスポーツなど大学自動車競技にはさまざまな種目がありますが、それぞれの競技にはどのような面白さや難しさがあるのでしょうか。
畑田選手: まず、うちの部活についてお話しします。特に力を入れている競技は2つで、1つは学生自動車連合が主催する大会の中で今年から始める学生ジムカーナ選手権大会、2つ目は埼玉県の本庄サーキットで開催される本庄軽one耐久学耐クラスシリーズです。

ジムカーナの面白さは、通常のレースでは使わない特殊な運転技術が求められる点にあります。たとえば「サイドターン」という技術は、コーナーでサイドブレーキを引いて後輪を意図的に滑らせ、車体の向きを素早く変えることでパイロンを小さく回ってタイムを縮めるものです。またサーキット走行とは異なり、パイロンの配置によっては人それぞれが異なる走行ラインになることも魅力の一つです。難しさについては、今まで耐久レースで身につけてきた運転技術とはまったく違う部分を練習しなければならないところが挙げられます。

耐久レースは5時間走行でドライバーが5〜6人交代しながら周回数を競います。面白さはドライバー1人のスキルだけで順位が決まらない点で、チームで戦う色合いが非常に強い競技です。うちの部活では、チーム全体を統括するエンジニア、走行状況を伝えるスポッター、周回数を管理するカウンター、ラップタイムや後続車のペースをドライバーに共有するタイマーなど、さまざまな役職があります。他の車と一緒に走るレースならではの刻一刻と変わる状況を、チームが連携して対応していくところが醍醐味です。難しい面としては、新入生を積極的に役職に入れているものの、最初はチームとしての連携がなかなかうまくできず、戦略面での対応が難しくなることがあります。
FXI: チームで役割を分担して戦う耐久レースは、競技以外の力も育てられそうですね。eスポーツについてはいかがでしょうか。
前川選手: 東京電機大学はグランツーリスモのGTカレッジリーグに参加しています。各大学の代表3名がチームを組んで挑む団体戦で、今年は幕張メッセで開催されました。
東京電機大学は昨年・一昨年と優勝しています。個人でグランツーリスモを所有している部員が選手として出場することが多いのですが、部室にもシミュレーターが設置されていて、ジムカーナや耐久レースのサーキット走行における技術向上にも役立っています。
FXI: ジムカーナの話の中でサイドターンなど特殊な操作が登場しましたが、ダートトライアルへの挑戦も検討されていますか。
畑田選手: ダートトライアルは見学をよくしていて、前向きに取り組みたいとは考えています。ただ、路面の状態が悪く車が壊れやすい競技で、エンジンや足回りへのダメージが大きいため、現在はコストの問題からもう少し後に回そうという判断をしています。
ちなみに、ジムカーナで使用しているスイフトスポーツに装着しているロールケージは、ジムカーナ用途だけでなくダートトライアルでも対応できるよう考慮して設置したので、将来的に挑戦する意思はあります。
整備技術はゼロから積み上がる——エンジン載せ換えから緊急対応まで
FXI: 自動車部では、競技車両の整備やセッティングも学生自身で行うと聞きます。活動を通じて、学生はどのような整備技術や車両知識を身につけていくのでしょうか。
畑田選手: 毎年入部する部員の多くは、車の専門知識があまりない状態からスタートします。活動の中でオイル交換やタイヤ交換といった基礎的な整備を全員が身につけていきます。
また、軽耐久レースではエンジンを酷使する場面が多いためエンジンブローが起こることもあり、エンジンの載せ換えやトランスミッションの組み直しといった、一般の整備工場でもなかなか行わないような高度な作業も経験します。
競技車両向けのセッティングやチューニング、パーツ選定の知識も、先輩から教わったり自分で調べたりしながら習得していきます。また大会では、ジムカーナで1本目を走った後に車が壊れた場合、次の走行前に修理が完了していれば出走できるというルールがあります。そのため、時間をシビアに意識しながら迅速かつ正確に整備を行う力が自然と身につきます。
FXI: 知識がない状態からでも実践の中でどんどん吸収できる環境が整っているのですね。前川選手はいかがですか。
前川選手: 私自身、入部当初は専門的な知識がほとんどなく、先輩方に教えていただきながら少しずつ理解を深めていきました。整備と走行が密接に関わっているところが印象的で、自分たちでセッティングした車両に乗ると、タイヤの空気圧など些細な変化でも体感が大きく違います。
またトラブルを経験する中で、その場で状況を判断して行動する力や周囲と協力して作業を進める大切さなど、自動車の知識・技術以外の実践的な力も養われていると感じます。
FXI: 実際の活動の中で失敗から学んだことや、印象的なトラブルの事例があれば教えていただけますか。
畑田選手: 1月にエンジンの載せ換えをした際、エンジンがかからないという事態が起きました。
下級生たちが半日かけてあらゆる原因を探したのですが見つからず、翌日に先輩に来てもらいました。するとアース、つまりバッテリーのマイナス端子を車体と繋ぐ配線の1本が外れていたことがすぐに判明して、それをつなぎ直した瞬間にエンジンがかかりました。小さなパーツ1つでエンジンがかかるかどうかに大きく関わるという機械の精密さに感動すると同時に、先輩たちの知識と経験の深さを強く実感した出来事です。
前川選手: 少人数でジムカーナの練習に行ったとき、ドライブシャフトが折れるトラブルが起きました。
事前に壊れることを想定して予備パーツを用意しておけばよかったのですが、予算的に準備ができていなかったため、その場でみんなで積載車を借りられる場所を探して手配しました。この経験から、トラブルが起きた場合にどう対応するかを事前に考えてから大会や練習に臨むようになり、すごくいい学びになったと思っています。
車との向き合い方が変わる——移動手段から自分だけの趣味へ
FXI: 車が好きで入部する学生も多いと思いますが、競技や整備を経験する中で「車の見方」や「運転に対する考え方」はどのように変わっていくのでしょうか。
畑田選手: 入部当初は、車好きの人でもデザイン優先で選ぶことが多く、あまり興味がない人はあくまで移動手段として見ている場合が多い印象です。
それが部活での合宿や練習を通じて、大切な趣味の一つに変わっていく人が多いと感じています。
具体的には、エンジンの性能を考えて車を選んだり、マニュアルでサイドブレーキが手引きのものかどうかといった運転スタイルを考えた上で選ぶようになったりと、移動手段という視点から自分のスタイルに合わせた趣味の対象へと見方が変わっていきます。
運転に対する考え方については、コーナリング時に前輪に荷重をかけてタイヤをゆっくり切るなど、タイヤの摩擦を意識したモータースポーツの基礎を日常の運転でも実践するようになります。法定速度内では必要ないように思われるかもしれませんが、雨の日や雪の日など路面の摩擦が低い状況では、こうした意識や技術が安全運転に直結します。僕自身も友人と旅行に行く際に車を出すことが多いのですが、運転がうまいと言われる機会が増えてきました。
FXI:例えば、具体的に「ここが今までと違う」と感じた瞬間や、印象に残っている場面はありますか?
前川選手: 入部前は、マニュアル車に乗ってみたいという程度の漠然とした興味しかありませんでした。ただ部活では常に車の話をしているので、徐々に車種が分かるようになっていきました。入部当初はトヨタ86がどの車かも判別できなかったのですが、部員からいろいろ教えてもらううちにどんどん知識がついていきました。
サーキット走行や練習を重ねる中では、タイムを縮めたいと思ったときに重心の位置や荷重移動を意識しながら走れるようになり、車の動きをより細かく捉えられるようになっています。運転の機会を増やしたいという気持ちから、自動車部に入ってから準中型免許も取得して積載車も運転できるようになりました。
FXI: それぞれの運転スタイルや好きな車についても伺えますか。
畑田選手: 今はMAZDA3の6速マニュアルに乗っています。
街中でよく走っている普通の車に見えるのですが、マニュアルならではのエンジン音や走り方を自動車部の人はよく分かっていて、それを発揮すると急に振り向かれることがあります。
そういうちょっと変わった感じが自分の運転スタイルに合っていて気に入っています。
好きな車で言うと、ホンダのシビック(EK9)やDC2インテグラなど、B型エンジンを積んだ旧車には強い憧れがあります。
前川選手: 私は現在自分の車を持っていないのですが、実家のミニバン(エスクァイア)で部員の送迎をよくしています。
免許を取りたての頃はミニバンの横転への恐怖感がありましたが、運転に慣れるにつれてどのくらいのカーブならどれだけブレーキを踏めばいいかが分かるようになり、恐怖感がなくなって運転も安定してきました。
欲しい車はトヨタ86のZN6前期で、前期の顔と純正テールランプのデザインが好きで選んでいます。性能よりも見た目で選んでしまっているところはあるのですが、マニュアル車であれば十分で、街中で見かけるだけで幸せになるくらい好きな1台です。
50人規模が生む多彩な活動——東京電機大学自動車部の特徴と強み
FXI: 東京電機大学自動車部ならではの特徴や強みはどのような点にあるのでしょうか。
畑田選手: 一番の特徴は、ジムカーナと耐久レースという異なるジャンルの競技を同じ団体でやっていることだと思っています。
他の自動車部でも複数の種目に取り組んでいるところはありますが、ジムカーナを今年から新たに始めながら軽耐久レースを継続するという、新旧の挑戦を同時に進めているところが幣部の面白い点です。
こうした多面的な活動ができる理由の一つは部員数にあります。新入生も含めると現在約50人という規模で、これだけの人数を抱える自動車部はなかなかありません。その人数を生かしてさまざまな種目や活動にどんどん取り組んでいこうとしているのが、今の部の姿勢です。
FXI: 50人という規模になると、練習時間や車両の確保が難しくなる場面もあるのではないでしょうか。
畑田選手: その点は現在の課題でもあります。
試合に使う競技車両と練習用の車両は分けているのですが、練習車両の台数がまだ十分ではありません。そのため新しい車両の導入を検討しているほか、台数が揃っているシミュレーターで基礎を教えて、習熟度が上がった部員から実車で練習するという形も取り入れようとしています。ドライバーとしての練習だけでなく、整備を学びたいとか運営に関わりたいという部員も多いので、走行中に整備を教える時間を設けたり運営に人を回したりして、みんながやりたいことを実現できるよう工夫しています。
やりたいことが増えたら実現できるように変えていくのが今の姿勢で、大きな不満は出ていない印象です。
FXI: 雰囲気やチームワークの面ではいかがでしょうか。
前川選手: 人数が多いにもかかわらず部員同士の距離がとても近く、雰囲気のいい部活だと感じています。
参加率も非常に高く、ほぼ全員が毎回の活動に参加しているほどみんなが積極的です。
知識のある部員が知識のない部員に普段の活動から丁寧に整備を教えてくれて、大会や競技の場でも学年を問わず協力して動くため、自然とチームワークが身についていきます。
ジムカーナ、軽耐久レース、グランツーリスモのGTカレッジリーグとさまざまな競技に触れられるので、整備に集中したいとか競技に出たいとか、自分に合った関わり方が見つけやすい環境です。活動を通じて興味や視野がどんどん広がっていくところも、この部活の強みだと感じています。
「ちょっと気になる」で十分——車好きが集う場所へ
FXI: 車が好きな高校生や大学新入生にとって、自動車部はどのような魅力のある場所なのでしょうか。また、これから車やモータースポーツに興味を持つ若い世代へメッセージをお願いします。
畑田選手: 自動車部は、車好きの憩いの場だと思っています。
最近は車離れを言われることも多く、周りに車が好きだと打ち明けられる友人がなかなかいない人も多いと思います。自動車部はみんな車が好きなので、同じ趣味を持つ仲間と思い切り語り合えます。多少興味があるという程度の人でも、大会や合宿、普段の活動を通じてどんどん好きになっていきます。
また、OBになってからも仲が続いている先輩方が多く、今も僕らをサポートしてくださっています。車という共通の趣味でつながる輪が卒業後も広がっていくのが、自動車部の一番の魅力だと思います。
さらに自動車関連企業から支援をいただいていることもあり、そういった企業の方々と交流できる機会もあります。
個人ではなかなかできない整備も部活だからこそできることが多いので、ドライバー志望でも整備志望でも関係なく、ぜひ一度足を運んでみてほしいと思います。
FXI: 車に詳しくなくても大丈夫という安心感がありますね。前川選手からも若い世代へのメッセージをお願いします。
前川選手: 私自身も入部前は車に対して漠然とした興味しかなく、特別詳しかったわけでも、どうしても車が好きだったわけでもありませんでした。
免許を取得できる年齢はほとんどの人で同じなので、スタートラインは変わりません。自動車部はそこから経験を積み重ねながら、知識と技術を一から身につけていける場所です。
車に触れるだけでなく、仲間と一緒に目標に向かって取り組む達成感も大きく、大会や日々の活動を通じていつの間にか築かれている人間関係も、大学生活の中で得られる大切なものだと感じています。
OBになってからも続く仲の良さは、自動車部ならではの財産です。最初は不安が大きいかもしれませんが、車がちょっと気になるという気持ちがあれば、ぜひその気持ちを大切にして一度活動に触れてみてください。きっといい経験につながると思います。